タツナミソウ属の一種 Scutellaria sp.
落ち葉が積もった林床から、同じ林内の少量の水の流れがある湿地にかけて咲いていたシソ科タツナミソウ属の一種。
花序は1段しかないものもありますが、2,3段のものが多く、
いくつかは4段のものがあり、
一番多いものでは5段というものもありました。(写真奥で若い果実になっている方が5段)
花冠には腺毛が生えています。
花の色合いは下唇の張り出した部分は紫色で、中央の白い部分に紫色の斑点が多数並ぶといったものが多い。
中には張り出した部分がほぼ白色のものもありました。
花の長さは2cm弱。定規を立てると1.5cmくらい。
花序の長さは、4段のもので3.5cmくらい。
5段あったものでは5cmくらい。
花付きはそれほど密集していない。
萼や小苞、花序の軸にも腺毛があります。
あまり叢生せずに、1,2本の茎が立っている状態のものが多い。
草丈は15cm程度というものが多い。
1株だけ叢生したものも見られました。草丈は同じく15cm程度。
一株だけ30cmくらいと草丈が高いものもありました。(下の方が埋もれているのでもう少しあるかもしれません。)
湿地状の場所で咲いていたもの。
近づけないのでよくわかりませんが、花は4~5段あるものがあり、草丈は20cmくらいはあるように見えました。
花序のすぐ下につく葉は小さく、その下に付く葉が一番大きいものが多く、その上下の茎は間延びしたように長く、その次の葉はその大きな葉とほぼ同等か、やや小さめ。その葉の下の茎は短く、小さい葉が地際にあります。
「花序→小さい葉→茎が間延び→大きい葉→茎が間延び→同等、やや小さい葉→小さい葉→地面」
といった様子が一番多いようでした。(ごく小さく咲いたものは除く)
叢生状態のものでもだいたいそのような感じの葉の付き方。
中には、全体的に間延びした感じのものや、
中部に付く大きな葉の下の葉がさらに大きいというタイプもありました。
葉の様子は葉先、鋸歯ともに丸い。
葉脈に沿った斑入りの葉はありませんでした。
葉裏には全体に開出した毛が生えていて、腺点があります。
下部の葉では紫を帯びたものもありました。
葉表にも開出する毛が生えていて、腺点もあるようです。
中ほどにつく一番大きな葉で3.5cmくらいというのが多い。
草丈が30cmくらいあった株の葉は4cmほどありました。(その葉柄は2cmくらいでした。)
長い毛と短い毛があり、長い毛は比較的先端までまっすぐの開出毛ですが、短い毛では下向きに曲がっているようです。(上向きも僅かに混じっている)
また茎の色は、下の方では赤味を帯びていて、上にいくと緑色になっているようでした。
茎の毛の様子は、大きな葉の付いた節より上側の茎では下向きに曲がった毛ですが、下の方の茎では開出毛が目立って見えます。
下の方の茎で、まっすぐな開出毛が多いもの。
こちらは微妙な感じのもの。
以上、こういった具合のタツナミソウ属の一種なのですが、実は昨年このあたりで見たときはタツナミソウ(S. indica)と考えていました。
そのときはほんの一角で咲いていたものにしか気づいてなかったこともあり、日当たりなど環境的な問題でたまたま花数が少なめだったり、葉が少し大きいのだろうと考えたのでした。
その後、けっこう広い範囲に生えていることに気づき、今シーズンあらためて観察して見たところ、葉の大きさの違いや、花序の花数が少ないことに加え、草丈が平均的に低すぎることや、茎の色や毛の様子なども気になり、いくつ株を見ても「タツナミソウらしさ」がある株が見当たらない上に、むしろ林床や林内の湿地のような場所を好んでいるようにも見え、タツナミソウとするには無理があるようでした。
ということで、あらためて他のタツナミソウ属についても考えてみましたが・・・。
茎の毛が開出するというイガタツナミ(S. laeteviolacea var. kurokawae)に間延びした草姿は似ている気がしましたが、イガタツナミは葉裏に腺点がないことが特徴なので違うようです。
茎の毛が下向きという特徴を持つホナガタツナミソウ(S. laeteviolacea var. maekawae)は、葉が茎の下部に集まってつくとされますが、中ほどで間延びした草姿のものが多いのでこれまた違うように思えます。
また、それらの基本種にあたるシソバタツナミ(S. laeteviolacea)は、茎の毛が上向きなのでこれまた一致しません。
そもそも葉の両面に腺点が見られたという点で、それらには当てはまらないことになるのですが、困ったことに葉の両面に腺点があるというのはヤマジノタツナミソウ(S. amabilis)くらいしか情報が見当たらずで、そのヤマジノタツナミソウとは茎の毛の質を含め、その他いろいろと違っているようです。
その他にも、〇〇タツナミ、〇〇タツナミソウといったものがいくつかあるものの、特徴が一致すると思えるものは見つけられませんでした。
ということで、結局一周回ってタツナミソウ?と思ってみても、やっぱり違うので、堂々巡り状態になり、不明なタツナミソウということになりました。
タツナミソウ属は見分けが難しいことで知られていますが、地域によって環境によっても変化が多いようだし、いずれにしてもよほど典型的な様子のものでないかぎり判断しようがないのかもしれません。
果実や種子の様子も観察してみるかもしれませんが、おそらく答えは出せない気がします。
(追加画像)
(5月下旬)
下部の葉で、裏側が紫色を帯びるものがありました。
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