Familiar Flowers 2

身近で咲く花たち。

ツリガネズイセン(スパニッシュブルーベル) Hyacinthoides hispanica

全体像

 庭などで栽培されるキジカクシ科の花。写真は自宅庭のもの。

(後日追記訂正: 記憶を辿ると、Hyacinthoides hispanica 'Excelsior' という園芸品種だったように思います。画像検索してみてもほぼ様子が一致するし、国内でも販売があるようで、パッケージにも見覚えがあるような気がします。

ということで初回投稿時は参考サイトの解説との微妙な相違について、なんらかの園芸品種という理由、或いはハイブリッドの可能性も考えながらの内容でしたが、 'Excelsior' という園芸品種であることを前提に少々書き直しました。)

 

花序の先の方の様子

花の径

花被の長さ

花序は先端まで直立し(わずかに傾く程度に垂れることもあるようです)、草丈は40cmほど。

花の形状は鍾形で、花被片の先は広がるように開きますが、先端はあまり反り返りません。花は無香か微香で写真のものは微香がありました(特に甘いという香りではない)。 花色は淡い青紫色で花被片の中肋は色が濃い。花色は白やピンクもあります。

よく比較されるイングリッシュブルーベル(和名ヒメツリガネズイセン、学名 H. non-scripta )の花序は項垂れ、花は花序の片側にぶら下がるように咲きます。花の形状は筒状で先端が強く反り返り、芳香は強く甘い香り、花色はより濃いスミレ色です。こちらもまた白やピンクのものがあります。

といったように、大体の花の様子だけ比較しても、両者にはあきらかな差があるのですが、海外wikiによれば8000年前ほどには同一の植物だったと考えられているようで、容易に中間的で多様な変化を持つ交雑種( H. x massartiana )が出来るため、ハイブリッドブルーベルとも呼ばれるその交雑種との見分けが難解になることがあるようです。

 

苞葉の様子

小花柄基部には苞葉が2つ。

 

小花柄 長さが短い?

写真のもので小花柄は1cm強。小花柄の向きはこの時点では上部の花を除いて下を向いています。

Cumbria botany という海外サイトのスパニッシュブルーベルの写真をみると、特に花序の下の方で咲く花においては、小花柄が花被の2倍くらいはありそうな長いものもあり(必ずしもそこまで長いものばかりでもないですが)、斜上していました。

 

終わりかけの花

少し時間が経った様子。

自宅庭の花でも終わりかけている花ではやや斜上し、花は横向きになっていました。しかし小花柄の長さは短いようです。果実の状態では上を向くことから考えると、受精した花は徐々に上を向くのだろうと思います。

 

先に追記したように、'Excelsior' という園芸品種だったと思われ、画像検索したところ、小花柄の様子も近いものが見られました。本来のスパニッシュブルーベルの小花柄の様子はさておき、少なくともこの園芸品種においてはこのような感じもあるのだろうと考えることにしました。)

 

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道端の花の様子 全体的な様子

道端の花の様子

自宅庭の花から一旦離れ、この2枚は道端で見かけた花の様子になります。野生化したものではなく、栽培していて持て余したものを植えたものかと思います。

ここの個体では、花序の中部以下の小花柄はそれなりに長さががあり斜上した様子が見られました。

やはりこちらもなんらかの園芸品種なのではないかと思うのですが(或いは同じ園芸品種で生育状態の差であることも考えられますが)、先ほどの海外サイトを参考にするならこちらの方が典型的なスパニッシュブルーベルにシルエットは近いように見えます。

実際のところ、イングリッシュブルーベルを中心にした情報が多いので、野生のスパニッシュブルーベルの様子については、いまいち掴みにくいところがあります。

 

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自宅庭の花に戻ります。

花の様子1

開く前の若い葯は青味がかっています。花粉は写真で見るより実際には緑がかった色をしていました。

スパニッシュブルーベルは葯も花粉も青色とされますが、後に葯も花粉もより淡く、緑ががかることもあるようです。

因みに、イングリッシュブルーベルの葯と花粉はクリーム色です。

 

雄しべと花被の合着部2

雄しべと花被の合着部3

一つの葯の花粉だけ黄色味が強くなっているものがありました。

さきほど載せた道端の株でも、花序の最上部付近の花では葯が青色で花粉も緑がかったものが見られましたが、それ以下の花では黄色をしていました。

青色から緑色へと変化することがあるのなら、さらに時間が経過すれば黄色系に変化するということも考えられそうに思いますが、さらに観察が必要かもしれません。(追記:のちの様子の画像を追加しました。やはり変化すると考えて良さそうに思います。)

 

因みに、雄しべの長さについて、Flora of North America ではスパニッシュブルーベルの雄しべは同長で、イングリッシュブルーベルの雄しべは不同長と書かれているようです。実際には外花被片につく雄しべと内花被片につく雄しべでは少し長さに差があるのが普通と思うので、「ほぼ同長」と「明確に不同長」という意味だと解釈することにしました。イングリッシュブルーベルでは Cumbria botany の画像を見るとかなり明確に差があるようでした。

 

また、花被片と雄しべの花糸は合着しているのですが、海外wikiによれば、外花被片において、スパニッシュブルーベルの場合、雄しべの長さの75%以下が合着、イングリッシュブルーベルでは75%以上が合着だそうです。Cumbria botany では、外花被片の雄しべの出ている位置は、スパニッシュブルーベルでは外花被片の真ん中より下の方、イングリッシュブルーベルではより上部にあるとも説明されていました。(ハイブリッドはほぼ真ん中付近。)

実際に測定してはいませんが、分離した花糸部分が長く、合着部分も外花被片の中ほど以下に見えるのでスパニッシュブルーベルの条件に合っているかと思います。

 

葉の様子

葉の幅

葉の幅は一番広いもので3cmでした。狭いもので1cmくらい。

スパニッシュブルーベルは1.0~3.5cmくらいまでの幅の広い葉を持つのも一つの特徴。ただし、ハイブリッドブルーベルも1.0~3.0cmと幅がある場合もあるようです。ちなみに、イングリッシュブルーベルは0.7~1.5cmくらいというのが一般的なデータのようです。

 

若い果実の様子

(2018年5月中旬)若い果実の様子。

果序の軸に隠れて見えにくいですが、奥にも若い果実があり、果柄は斜上しています。

 

裂開した果実 種子の様子

(2016年6月下旬)種子ができた様子。

果実は3つに裂開。種子は黒色。

 

発芽の様子

(2017年2月下旬)発芽の様子。 (あえて蒔いてみたものです。)

 

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花序の先端の方が、わずかに傾いく程度に垂れていました。

暑さの影響で一時的に垂れたといった状況でしょうか。

どこのサイト(海外)だったか、わずかに垂れることもあるといったことが書かれていたのですが、たしかにそうだったようです。

あまりこれまで記憶になかったので(単にそこまで注目していなかっただけかもしれないのでわかりませんが)、その解説はスルーしてしまったのですが。

 

葯の色の変化

葯の色は、こうしてみると、やはり開花して浅い花ほど青いようです。

 

時間の経過した花粉の色

わずかに残っているものをみると、花粉もクリーム色系になっているようです。なので、やはり変化していくと考えて良さそうに思います。

今の所、緑がかった花粉しか観察できていませんが、もしかすると本当の初期の花粉の色は青色だったりするのかも?