(耐寒性マツバギク) Delosperma cooperi
庭植えから公園樹、街路樹の下草などで、ごく普通に見かけるハマミズナ科の花ですが、和名がよく分からない花です。
一般的にはマツバギクと呼ばれていますが、Lampranthus属の花もマツバギクと呼ばれ、そちらは耐寒性があまりないことから、園芸的にはこちらを「耐寒性マツバギク」と呼ぶことがあるようではあります。
Ylistで検索してみると、マツバギクという和名はLampranthus spectabilis に当てられているようです。一方、Delosperma cooperi に関しては掲載がないようです。
昔からの定番ともいえる園芸植物であり、ときに逸出もあるくらいなのに、和名も掲載もないのはかなり不思議です。
想像では、たとえば過去にこの花を Lampranthus spectabilisと誤同定があり、後になって間違いに気づいた。しかしすでに、マツバギクという和名はLampranthus spectabilis に対して付けてしまっているため、Delosperma cooperi をマツバギクとするわけにいかなくなり、和名がなくなってしまった・・・なんてことだったりするのかも。ただの想像なので実際のところわかりませんが。
それはさておき、結局のところ両者は何が違うのか?ということが知りたいのですが、海外の画像を見るとLampranthus spectabilisは少し直立傾向があるというか、同じように這い広がっていても全体的に高さがあるように見えました。あとは花弁(便宜上)がより繊細で多いようなとは思いましたが、画像からの印象なのでよくわかりません。
国内園芸サイトなどを見ると耐寒性マツバギクは6月くらいから夏の間も花が見られますが、Lampranthus属のマツバギクは開花期が4~6月と早めのようです。
属が違うくらいなので、もっと色々と明確な違いがあるかと思われますが、当たり前に見かける花なのにいまひとつ分からないことが多い花です。そもそもLampranthus属のマツバギク自体をよく見たことがないのも問題なので、来年の花期にでも園芸店に並んでいるようであればよく見てみたいと思います。
花径は4~5cmくらい。
花弁には強い光沢があります。
先ほども(便宜上)と書きましたが、これは仮雄しべが花弁状になったもので花弁はないともされるようです。
花弁も雄しべも結局のところ由来は同じで葉が変化したものと考えるなら、見方によってはここまで花弁らしいものなら花弁としてもいいような気もしますが、問題があるのでしょうか・・・。
終わりかけの花をみると、柱頭が5つあるのが見えました。
先端に尖った付属片が付いているようなのですが、これまた仮雄しべと形状が似通っているように見えます。
同じ由来のものがそれぞれ花弁状になったり雄しべになったり雌しべになったりということが、この花ではわかりやすい様子をしているようです。
花の裏側をみると、萼片のような葉状の長いものが2つと、短いものが3つ(正確には内1本がやや長い)あります。
短いものには膜状のものがついています。
蕾の状態で見ると、その短い3つの膜状の部分が蕾を包んでいます。
果実期の様子で見ると、それらの基部付近が果実を包むように花のときより膨らんでいるようです。
これらの萼片のようなものは、花托の縁が萼状裂片になったものであり、花弁に続いて萼もないともされているようです。これまた、見方によっては花托に萼片が付いている(萼と少々裂けた花托筒が一体化している)と見て、萼片としてもいいような気がするのですが、なんだかいろいろと一般的な花とは違う見方がなされるようで、和名の件だけでなく難しい花です。
葉の様子。多肉質。
この2枚は自宅鉢植えのものですが、葉の印象がちょっと違う感じに見えます。
もともと普通の耐寒性マツバギクを鉢に上げてみただけのものなので、環境による変化でこうした様子にもなるようです。
上部の茎の様子。透明な乳頭状突起があります。それより小さい突起も密にあります。
垂れ下がるもの。
その茎。
上部の方では先ほどのと同じような様子。
それより下の茎を見てみると、大きめで透明な乳頭状突起がなく、小さい突起ばかりでしたが、上向きに伏した刺状になっているようでした。
株元付近の茎は古いものではやや木質化しています。
果実は蒴果。
果実の径は1cmちょっと。