イヌホオズキ類3種の見分け方。
イヌホオズキ(Solanum nigrum)、アメリカイヌホオズキ(S. ptychanthum)、テリミノイヌホオズキ(S. americanum)の3種の比較。
単純に似てるだけでなく、学名の混乱などもあり難しいという印象の強い仲間ですが、実は見分け方は意外と簡単で、もちろん種子を数える必要もありません☆
(道端のものだけでは除草にあったり、同じ個体を確認できなかったりすることもあるので実生鉢植えで育ててみたものも加えて観察しました。)
果実の状態
(左列 イヌホオズキ 中央 アメリカイヌホオズキ 右列 テリミノイヌホオズキ)
果実の状態が一番簡単です。
・横から見た形。
イヌホオズキ 球形~縦長
テリミノイヌホオズキ 横長
・上から見た萼の形
アメリカイヌホオズキ ペタっと張り付くor少し反り返り、裂片が不揃いで歪な星形が多い(たまには整ってることもありますが)。
テリミノイヌホオズキ 強く反り返るため、小さく見える。
というわけでここまでの2点でほぼわかります☆
葉や草姿などには変化が多い種なので、まずは果実の違いを把握することが一番と思います。
以下は果実の続き、花や草姿の比較。
・花序、小果柄
イヌホオズキ テリミノイヌホオズキ 小果柄が交互にズレて出る様子が分かりやすい。
アメリカイヌホオズキ よく見ると一点ではないが、パッと見は一点に見える。一つだけ大きくズレた位置に枝分かれした花柄が出ているときがある。
(一つ大きくズレてつくのはオオイヌホオズキの識別ポイントとしていることがありますが、アメリカイヌホオズキでも普通に見られるのでオオイヌホオズキだけの特徴ではないと思われます。)
・光沢具合
イヌホオズキ 艶消し~弱光沢
テリミノイヌホオズキ 弱光沢~強光沢。
※写真で使うものは分かりやすいものを選択しているため光沢でもわかる気がしますが、実際の光沢具合は時期やタイミングによって同じ株内でも変わってくることもあり、写真などでは特にカメラや天候の影響もでますので、あまり重視、意識し過ぎる必要はないと思います。
※アメリカイヌホオズキとテリミノイヌホオズキでは名前の印象からテリミの方が強いと思ってしまいますが、それぞれ最大に光沢があるものを比較した場合など、明確に線引きは難しいことが多いと感じます。)
果実の形、萼の様子が違うのがわかる。
イヌホオズキの果実。
完熟期になると萼が枯れてくるので、株内にもっと若い果実があればそちらを見るか、果実の形で見るといいと思います。
(左からイヌホオズキ アメリカイヌホオズキ アメリカイヌホオズキ イヌホオズキ)
なお、イヌホオズキは小果柄を残し果実だけ落下、アメリカイヌホオズキは小果柄ごと落下というような情報も見たことがありますが、これまで見てきた様子では一概に言えるものではありませんでした。それどころか、落下せずにそのまま萎れていくものもけっこうあります。
(後日、以下3枚追加)
熟し度が違いますが、左がイヌホオズキで中央と右はテリミノイヌホオズキ。
どちらも家に生えてきたもの。果実の形はアングルとか個体差もあったりで写真ではややこしいですが、萼の違いは分かりやすいです。テリミノイヌホオズキは小果柄が弧を描くような感じをしていることが多い。
テリミノイヌホオズキ、若い果実。
フケ状斑が見えますが、その量は株ごとに決まったものではなく同じ株内でも多く出るものと少ないものがありました。
多いときと少ないときの理由については分かりません。
花での比較。
花序の様子は果実のところに書いたのと同じです。
チェックポイントは葯の様子。
イヌホオズキでは2mm以上あるのが普通。
写真のようにイヌホオズキの葯の集まりは長さも太さもあり大きく見えます。
いちいち計るのは面倒ですが、一度覚えてしまえば次からは見た目でもだいたい分かるようになります。
テリミノイヌホオズキは葯が短いですだいたい1.0~1.5mm以下。
短いですが太さがあって団子状に纏まって見えます。
イヌホオズキの花は反り返っていることも多いですが、花冠の裂片に幅がありふっくらして見えます。写真は秋のものですが、秋になった頃は特にこのように幅があるものをよく見かけます。夏の方が花は小さめなことが多い気がします(一概にいえなかもですが)。
花色は基本白色で、晩秋の花でもよ~く見ると花の裏側にかすかに滲む紫色が見えることがある程度でほぼ見た目には白い花です。
アメリカイヌホオズキの花は、秋も中盤を過ぎると全体が紫色にそまった花を見かけるようになります。秋以外のシーズンでは白い花も見かけますが紫を帯びた花がまじることがよくあります。
テリミノイヌホオズキの花は、他の花と写ったものを見てもわかるように、花冠は平均的なもので比較して小さめです。
花色はイヌホオズキとほぼ同じで白が基本で紫は花裏にかすかに滲むことがある程度で基本白い花。
草姿や葉について。
テリミノイヌホオズキ(良い写真がなく、晩秋で少し勢いがなくなった状態。)
草姿ですが、イヌホオズキとテリミノイヌホオズキは茎が直立し(上に伸びる)左右にバランス良く枝が伸びます。全体の大きさではイヌホオズキの方が大きく育ち、1m四方はありそうなの大株になるものもあります。茎の色はどちらも暗紫色になることが多い。
一方でアメリカイヌホオズキは、芽生えからしばらくは直立していますが途中から斜めに伸びる枝が目立つようになり偏ったバランスになりがち。枝は他の草に寄りかかるように枝垂れ傾向になったり、直立する力が弱そうで風などに煽られる内に全体に斜上になったりします。茎の色は緑~暗い緑色が多い。
ただしそれらは一般的な場合であり、稀なケースではイヌホオズキが完全に地面を這っているものや、塀などを背にしたり安定した環境では草丈が高くなったアメリカイヌホオズキも見かけます。見慣れてくると傾向を感じますが、単純に草丈や姿を言葉で表すのは難しいです。
(写真はテリミノイヌホオズキの葉。)
葉にも3種それぞれに傾向はありますが、大きさは環境によってかなり変化があります。
3種とも根があまり張れないような場所ではそれぞれ2cm程度の葉ばかりになることもあるし、日当たりや水分量によるかと思いますが、かなり大きな葉になることも。(追記2017: たまたま他の鉢植えに生えてきたイヌホオズキの葉が葉柄まで含めた長さで30cm以上になりました。イヌホオズキの記事に画像追加。)
鋸歯の具合も、同じようにそれぞれ全くないものからしっかりあるものまでさまざまあります。
今回3種の比較でしたが、もう1種よく見られるらしい?オオイヌホオズキには今のところ出会ったことがありません。アメリカイヌホオズキに似ているようですが、はっきりした違いは葯は2mm以上あるところのようです。
☆関連記事リンク☆